【ターゲティング広告まとめ②】サードパーティCookie廃止による影響とは?

『ECサイトで欲しい物を検討していて、「また後日にしよう」と別のサイトにアクセスしたら、先ほどECサイトで閲覧していた商品が広告バナーに表示されている

このようなことを体験している方は多いのではないかと思います。

それほど、ターゲティング広告は私たちの生活に非常に近い存在となっています。

前回の記事、「ターゲティング広告まとめ①」では、ターゲティングに使われる代表的な手法と、今までのターゲティングの歴史を紹介してきました。

内容を簡単にまとめると、

・ターゲティング広告の手法が最初に登場したのは、2000年のアメリカと言われている。

・ターゲティング広告は、「オーディエンスターゲティング」、「コンテンツターゲティング」、「デバイスターゲティング」、「ジオターゲティング」の4つに分類できる。

・2010年代に登場したリターゲティング広告、特にダイナミックリターゲティング広告は大きく流行することとなった。

・2020年代になった現在、サードパーティCookieを活用したターゲティング広告が廃止されていく動きがあり、リターゲティング広告をはじめ、転換期を迎えている。

という内容でした。

今回の「ターゲティング広告まとめ②」では、現在ターゲティング広告が抱えている課題や、これからのターゲティング広告についての予想を書いていきます。

果たして、これからのターゲティング広告はどのようになっていくのでしょうか。

目次

ターゲティング広告転換までの背景

サードパーティCookie

最初に押さえておきたいキーワードは、「Cookie」です。

CookieとはWebサイトから訪問者のブラウザに送られる、訪問者のデータを保存しておくためのファイルのことです。

ブラウザがWebサイトにアクセスしたとき、Webサイトがユーザーの行動内容に応じてCookieを発行します。

Cookieは一定期間ユーザーのブラウザに保存され、次回以降のアクセス時に読み込まれます。

このCookieを利用することで、ログインのID・パスワードの入力を省略することができたり、ショッピングカートの内容を保存できたりします。

Cookieのうち、Webサイトのドメインから直接発行されているものを「ファーストパーティCookie」と呼びます。

また、タグを読み込ませるかたちで、訪問したWebサイトとは異なる第三者のドメインからもCookieデータを発行することができます。

この第三者にあたる部分は、「アドネットワーク等の広告」だったり、SNSの「いいね」に見られるような「ソーシャルボタン」だったりします。

こういった第三者が発行しているCookieのことを「サードパーティCookie」と呼びます。

ターゲティング広告、主にリターゲティング広告では、サードパーティCookieデータを分析することでユーザーを想定し、精度の高いターゲティング広告配信を実現していました。

社会の動き

しかし、近年のプライバシー保護の高まりから、このサードパーティーCookieを利用したターゲティングを忌避する声も出てきました。

2017年にはAppleが、自社ブラウザである「Safari」に対してサードパーティCookieを廃止し、ユーザーを追跡しないようにする機能(ITP)を実装しました。

遅れて3年後の2020年には、Googleが自社ブラウザである「Google Chrome」に対し、サードパーティCookieを2022年までに廃止する意向であると発表しました。

また、企業と同じように政府にも動きがありました。

EUでは「EU一般データ保護規則(GDPR)」を2018年に施行し、アメリカのカリフォルニア州では、「カリフォルニア消費者プライバシー法(CCPA)」を2020年に施行しました。

日本も例外ではなく、2022年には「改正個人情報保護法」を施行する予定です。

これらの中でもEUは特に厳しい姿勢をとっており、Cookieのようなユーザーの関連データはもちろん、IPアドレスやSNSの書き込みなども「個人情報とする」と宣言する内容になっています。

EU、カリフォルニア州、日本とそれぞれ違いはありますが、基本的には「データの収集にはユーザーの許可を得たものでなければならない」という内容で揃っています。

今後はサイトやアプリにおいて、データ取得の許可を求められる機会が増えることが考えられます。

Cookieの代替になると予想されるもの

今回のサードパーティCookie廃止を受け、Cookieに代替される方法が議論されています。

その代表的なものを紹介していきます。

内容が少し専門的になってしまうのですが、できるだけ一般的に理解できるような言葉で説明していきます。

プライバシーサンドボックス(FLoC・FLEDGE)

プライバシーサンドボックスとは、Googleが提案しているCookieの代替とされる仕組みです。

プライバシーサンドボックスは、いくつかの機能(API)の組み合わせで構成されており、その中でも「FLoC」と「FLEDGE」というAPIが一際注目されています。

①FLoC (Federated Learning of Cohorts)

FLoC(フロック) は「個人ではなく、同じ関心を持つと想定される集団に広告配信する」という仕組みです。

名前にある「Cohorts(コホート)」は「群れ」を意味します。

FLoCは、訪問者のブラウザ上で実行され、過去1週間の閲覧履歴を使用して、
世界中の「似たような」人々のグループのどれかに割り当てます。

それぞれのグループにはFLoC IDと呼ばれるラベルが貼られ、
広告配信側はページ表示時に、訪問者のFLoC IDを知ることができます。

ひとつのFLoC IDは、個人が特定されないよう必ず数千人以上のまとまった単位に割り振られます。

このFLoC IDはそれだけでは意味を持たず、ただの文字列でしかないので、
どのFLoC IDに広告を表示するようにするかは別のデータとの照合が必要です。

現在のバージョンでは、33,872種類以上のFLoC IDのいずれかに分類されるようです。

個人を特定してのターゲティングを行うことも可能なCookieと異なり、
FLoCでは数千人以上のコホート単位での配信となるため、訪問者のプライバシーが守られやすくなります。

②TURTLEDOVE(Two Uncorrelated Request, Then Locally-Executed Decision On Victory)

TURTLEDOVE(タートルドーブ)は、サイト側で「興味関心が似ているグループ(インタレストグループ)」で分類したものにラベルを付与し、広告主はそのインタレストグループに対して配信を行う仕組みです。

FLoC同様、個人ではなく集団で分類するという点は同じ設計になっています。

TURTLEDOVEの仕組み上で生じる広告オークションは、ブラウザ内で完結されるようになっており、サーバー側には最低限のデータしか渡さない機能が備わっています。

また、インタレストグループ情報とサイトの内容に合わせて広告を配信するための情報(コンテキスト情報)を分けてサーバーに送信することにより、ユーザーのプライバシーが守られることを想定しています。

しかし、ブラウザ内でオークションを解決する仕組みがブラウザに大きな負担をかけてしまうことや、情報を分けて送信することが煩雑であるといった課題がありました。

2020年はこれらの課題に対し、Criteo、NextRoll、Magnite、RTB Houseといった関連企業から様々な提案が寄せられることになり、その中でもCriteoが提案した「SPARROW(スパロウ)」という代替案に注目が集まりました。

SPARROWではブラウザで広告オークションをするのではなく、独立したサードパーティサーバーを用意するという案であり、一層プライバシー保護対策を強めた機能になっていました。

Googleはこのような各企業のフィードバックを取り入れた形で、2021年にはさらなる改善案として「FLEDGE(フレッジ)」を発表しました。

現在ではこのFLEDGEが最新案とされており、2021年後半には試験を公開する予定としています。

最終的な仕様がどのようになるかは定かではありませんが、2022年のサードパーティCookie廃止までには、大きな発表が予想されます。

共通IDソリューション

共通IDソリューションは、サイトに訪問したユーザーにひとつずつIDを付与することによって、匿名のユーザーデータを共有できる仕組みのことです。

これにより、パブリッシャーと広告配信業者は共通のデータを利用して、ユーザーを識別することができます。

しかし、多くの共通IDはサードパーティCookieに大きく依存した形で管理されているシステムであるため、当然サードパーティCookie廃止の影響を受けることとなりました。

そこで、現在提案されているのが、ファーストパーティCookieを利用する方法や、メールアドレスを利用する方法です。

これらの方法が可能になれば、サードパーティCookieに依存することなく、ユーザーの識別ができます。

ただ、ファーストパーティCookieやメールアドレスといったデータは、ユーザーの承諾を得てから取得できるデータになるので、今までよりもデータの母数は少なくなります。

大きな広告配信ネットワークを再構築していくには、しばらく時間をかけていく必要がありそうです。

フィンガープリント

フィンガープリントとは、IPアドレス、端末の画面サイズ、画面解像度など、サイトへアクセスした際にブラウザから取得できるデータのことです。

その名にある通り、人間の「指紋」に近いもので、端末ごとに決められている情報を取得することができます。

Cookieに依存することなく、それぞれ固有の端末データを取得することができるのですから、「フィンガープリントを使えばいい」となりそうですが、問題があります。

フィンガープリントは、ユーザー側でデータ収集されないように拒否することができず、また、Cookieのように削除する仕組みがありません。

このことから悪用の危険性があり、Cookieの代替となるには多くの課題が残されています。

その他スーパーCookie

ユーザーを識別したり、データを計測する目的で利用されるCookieの代替技術のことを総称して、「スーパーCookie」と呼ぶ場合があります。

Cookieの代替とするため、今まで多くの技術が試されてきました。

前述のスーパーCookie以外にも、「ETags」、「HSTS」、「Flash LSO」など、様々なスーパーCookieが存在しています。

これらの仕組みも、フィンガープリントと同様にユーザー側からの受け入れ拒否や削除ができないことが問題視されています。

価値が上がっていくと予想されるターゲティング

サードパーティCookieの代替に限らず、この転換期に注目されているターゲティングは様々です。

今後価値が上がってくると予想されるターゲティングはどのようなものでしょうか。

Cookieの代替技術で採用されたもの

Googleのプライバシーサンドボックスを中心に、プライバシーに配慮した新しいターゲティング技術が模索されています。

他の会社からも様々な提案がなされており、どれも試用段階のためまだ先行きは不透明な部分も大きいですが、今後の動きに注目したいと思います。

ファーストパーティデータ、ゼロパーティデータ

メディアなどのサイト運営側は、今後は訪問したユーザーに対して「データの取得に対する許可・承諾」が必要になり、データ取得の難易度が上がります。

逆に考えれば、正当にデータを取得することができれば、競合に対して有利にもなります。

そのため、「ユーザーから承諾を得て取得することができたデータ」の価値が高まるのではないかと予想されています。

このような承諾を経たデータは「ゼロパーティデータ」と呼ばれます。

サイト運営者が、自らの運営サイトで取得するデータなので「ファーストパーティデータ」の一種ではあるのですが、近年の個人情報保護の流れにより、区別して呼ばれる動きがあります。

考えてみれば、ユーザーが無意識のうちに収集されているデータよりも、承諾されて能動的に提出されたデータの方が正確であることは明白です。

実際に、新聞社など各オンラインメディアでは「ここから先は会員のみ読むことができます」といった制限された記事を用意し、メディアの会員を増加させていく姿勢を見せています。

オンラインメディアで有料会員を増やしていけば、単純に月額の収益が確保できるメリットがあります。

しかし、たとえ無料登録だとしても多くの会員情報を保持していることで、広告掲載費用の単価を大きく上げることが可能です。

そのため、メディア会員化の流れは今後も続いていくことが予想されます。

以上のことはメディアだけに限らず、アプリやWebサービスに関しても同様のことが言えるかもしれません。

時代の流れで再評価されるターゲティング

サードパーティCookie規制の流れで、ターゲティングそのものの考えが変化し、再評価されるターゲティングも増えてきました。

インターネット黎明期である2000年代にすでに存在していたとされる、「コンテキストターゲティング」も、その中の一つです。

コンテキストターゲティングは、その名の通り、コンテキスト(文脈)に対してターゲティングする手法です。

以前は、サイトで利用されているキーワードを抽出したり、実際に手動で文脈をチェックし、相性のいい広告を表示していました。

それが2020年頃には、Cookie依存しない手法として再評価されてきています。

また、AIで機械学習しながらコンテキストを抽出し、最適な広告を表示させるという、「新しいコンテキストターゲティング」も注目されるようになりました。

全く新しいターゲティング

AI技術の発展や、5G回線の普及などのテクノロジー進化に影響して、全く新しいターゲティング手法が生まれる可能性も考えられます。

今後の技術革新のペースはさらに上がっていくと言われています。

2020年代に革新的なターゲティング手法が登場し、それが主流となっている可能性は低くないのかもしれません。

まとめ

結論としては、まだ今後のターゲティング広告がどのようになっていくかを正確に判断することはできないようです。

現在は、世界のWeb技術を標準化する主要組織である「W3C」が主体となって、各大手企業と議論を進めている段階です。

一つ、大きな動きが予想されるポイントとしては、「2022年」です。

理由として、

①Google ChromeのサードパーティCookie完全廃止予定
②日本では改正個人情報保護法が施行される予定

という、2つのイベントが重なることが挙げられます。

利用者数最大を誇るGoogle Chromeの転機と、日本の法改正施行が重なれば、国内で運営されているほとんどのサイトが影響を受けることとなります

ターゲティング広告の概念が変わるような日も、案外遠くないのかもしれません。

以上、ハットリがお届けしました。@hattori_shinobi

[ターゲティング広告まとめ①]オーディエンス・コンテンツ・デバイス・ジオ | shinobi
ターゲティング広告には様々な種類があり、私たちの暮らしに密接に関わっています。2021年現在までのターゲティング広告を総まとめで紹介します。