【都市伝説其の七】白い服の女
その日は、いつもより下校時間が少し遅れてしまった。
学校の近くのバス停へ足早に向かうと、真っ白いワンピースを着た女の人が立っていた。
隣に並び、腕時計で時間を確認すると、か細い声がした。
「すみません、今何時ですか?」
時計から顔を上げると、前に立っていた女の人と目があった。
突然声をかけられ、戸惑いながらも時計の時刻を伝える。
女の人は無表情のまま「ありがとう御座います」と小さく言って、再び車道へ向き直った。
バスが来るまでの時間を潰そうとカバンからマンガを取り出す。
しばらくしてバスが目の前に止まった。
すると、いつの間にか…先ほどの女の人の姿が消えていた。
もしかしたら待ちきれずに歩いて行ってしまったのかもしれない。
そのときは特に気に留めず、バスに乗り込んだ。

家から最寄のバス停は商店街前に止まるので、何か買っていこうとアーケードの中へ入る。
普段は人がごった返しているけれど、今日は少し遅いせいか人がまばらに感じた。
「あのう」
不意に背後から声がかけられる。
反射的に振り返ると、バス停にいた女の人が立っていた。
「すみません、今何時ですか?」
腕時計の時刻を読み上げると、相手も自分に気付いたのか「度々すみません」と小さく頭を下げ人ごみへ消えていった。
何か用事でもあるのだろうか。
二回も同じ人に同じことを聞かれるなんて変な日だ、ととりとめもないことを考えながら女の人が歩き去った方向に背を向けた。

商店街を抜けた先には小さな公園がある。
横切ると近道になるのでいつも通っているのだが、入り口で立ち止まってしまった。
数メートル先をゆっくりと、白い服を着た女の人があるいていた。
背中を冷たいものが駆け上がる。
回り道をして帰ろうとしたけれど、
『白い服を着た人なんて別に珍しくもなんともない』
と自分に言い聞かせるように考えて追いつかない速度で歩き出した。
いつもより果てしなく長く感じた出口へやっと辿り着き、内心ほっと息をついたところで
唐突に前の人が振り返った。
その顔を見て一瞬声を上げそうになった。
彼女はお面のような無表情で言った。
「すみません、今何時ですか?」
今度は答えられなかった。
明らかにおかしい。
さっき彼女は反対方向に歩いて行ったのだ。
ここへ来る道は幾つかあるけれど、自分より先に着くことは不可能だった。
疑問と恐怖が爆発し、そのまま走り出す。
公園から細い一本道に入り、ただ家を目指した。
角を曲がり、家の前の通りに出て…

自分が追い越されるはずがなかった。

少し先を歩いていた女が振り返る。
三度目の、寸分変わらぬ無表情で女は口を開いた。
「すみません、今何時でしょうか?」
◆皆様からの心霊体験、またはあなたの周りで囁かれている都市伝説を大募集します。よろしくお願いします。→応募フォーム