【都市伝説其の一】ちょっとまて!
ある日の真夜中、二人の大学生が郊外の廃墟に肝試しに出かけた。
そこは地元でも有名な心霊スポットで、伸び放題の雑草の中にひっそりと小さな民家が一軒残されている。
あとで他の友人達に証拠として見せようと、一人はビデオカメラで撮影を始めた。
かつて庭だった場所、玄関にかけられた表札、それから問題の廃墟を映す。
夜の廃墟という独特の雰囲気に気圧されたものの、ここまできて引き下がるわけにはいかない。
互いに恐怖を誤魔化すようにふざけあって中に入っていった。
「おじゃましまーす」
黴臭い空気が淀んでいたけれど、中は殆ど何もない状態だった。
「結構キレイですね」
「やっぱり幽霊なんて噂だけだな」
腐った床に落ちないように気を付けながら、順番に部屋を回る。
小さな家だったので探索はスグに終わった。
霊感が全くない二人だったとは言え、何も無さすぎた事に拍子抜けする。
入った時より余裕がある表情で「おじゃましましたー」と誰に言うでもなく言うと廃墟を後にした。
帰宅して友人を家に集めると、早速ビデオをセットする。
どこか半信半疑だった友人達も、暗い映像が流れ始めると色めき立った。
口々に称賛するのを「いいから見てろよ」と照れ混じりに制して、廃墟が映され続けるテレビを指し示す。
四角く切り取られた映像は中に入って行く場面だった。
「おじゃましまーす」
「いらっしゃい」
盛り上がっていた室内が一気に冷やされた。
「……お前ら以外に誰か一緒だったのか?」
廃墟に行った二人を振り返るが、画面を凝視したまま何も答えない。
もう一人が悪ふざけをした可能性は限りなく0だろう。
TVが吐き出したのは女の声だった。
映像は進む。
「結構キレイですね」
「ありがとう御座います」
「やっぱり幽霊なんて噂だけだよ」
「そんなことないですよ」
家主との会話ならば、全く違和感は無い。
けれど、ここは廃墟で、あの時はこんな声しなかった。
家をグルリと回り、再び玄関が映し出される。
得体の知れない恐怖から解放されたくて、誰も何も言わずにTVを見つめていた。
錆付いた音と共に引き戸が開かれ、前を歩いていた青年が笑いながら振り向く。
「おじゃましましたー」
「ちょっとまて!」
今までの静かな声とは打って変わった低い怒声。
と、その瞬間、部屋の電話がけたたましく鳴り響いた。
「…もしもし?」
「あ、××と申しますが…どうして帰ってしまったんですか?」
電話をとった青年は思い出してしまっていた。
玄関にかけられていた表札の名前を。
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