【心霊其の七】階段を上るもの
以前私は友人と三人暮しをしていました。
いわゆるルームシェアというやつで、メゾネットのアパートでした。
一階にはダイニングキッチンと六畳の部屋。
ぐるりと折れ曲がった狭苦しい階段を上がるとすぐ右に一部屋、左手には少し廊下を歩いて私の部屋、という間取りでした。
ある朝起きて、下の階に降りると他の二人が暗い表情で沈黙しているのです。
明らかにいつもと様子が変なので、どうしたのか聞いてみました。
すると昨日の夜中、恐ろしい事が起こっていたらしいのです。
二階のもう一人の住人(A子)は扉を開けたまま一人部屋にいました。
その視線の先には暗くのびる廊下とつきあたりに扉もしまり寝静まった私の部屋。
手前には闇の中に口を開けた階段があったはずです。
普段夜間に仕事をしているもう一人(T)にとっては夜中と言えど大抵起きている時間。
階段を下りてすぐ左手にある部屋で普段通り生活をしていました。
ただその日ばかりはいつもと違うのでした。
もうあと数時間もすれば空が明るくなってくる、そんな時にTが二階からA子の叫び声を聞くまでは。
部屋にうずくまってガタガタ震えるA子を見るまでは。
時間は少し遡りA子の部屋。
一人で床に体育座り。
爪の手入れでもしていたのでしょうか。
A子はもともと霊感のようなものがあるようで、度々見たり、感じたり、といった事があり、そのためわざわざお守りを持っているほどでした。
その時もしかしたら部屋の外の闇の中にいた"何か"をすでに感じていたのかもれません。
なぜ扉を開け放っていたのか。
それとも閉める事ができなかったのか。
真っ暗な階段をゆっくりと何かが這い上がって来たのです。
部屋から漏れる光にぼんやりと浮き出された階段の一番上の段。
そこに手のようなものぬっと出てきたたかと思うと、話しを聞いただけの私でも身震いしてしまいます。
徐々に全体を現していく"それ"を見たA子の恐怖はいったいどんなものだったのでしょうか。
そこにいたもの。
血まみれの髪の長い女が四つん這いになり階段から現れたらしいのです。
声も出ないA子はその場で固まり、抜けた腰をほんの少し後ろにずらす事しか出来なかった様です。
しかし女はそのままどんどん近付いて来てついに部屋の中へ。
その這いずる血まみれの腕を伸ばしA子の足を掴んだ瞬間、A子は叫び声を上げたのでした。
すぐにTが駆け付け震えるA子をなだめ、その後話しを聞いたのです。
そしてTが掴まれたという足を見ると…本当に着いていたらしいのです。
血の手形が。
A子は足を掴まれた後はパニックになってしまい女がどこへ行ったのかは誰もわかりません。
結局は聞いた話であり、陳腐な邦画ホラーのような内容で、私もここへ投稿するにあたり多少脚色はしていますが、これは現実に起こった出来事です。
あの日の朝の重い空気を忘れる事が出来ません。
世の中には私達の知らない世界が本当にあるのだな、と思う経験でした。
(まきさんからの投稿)






